重要判例解説(11);最高裁判所平成21年3月24日判決

1 事案
被相続人Aは,平成15年7月23日に所有する財産すべてをY(被告・被控訴人・被上告人)に相続させる旨の公正証書遺言(以下、「本件遺言」)を作成し,同年11月14日に死亡した。
その死亡時に存在していた積極財産,不動産4億2700万円(本件不動産)を含む 4億3231万7003円,消極財産は4億2483万2503円だった。
本件遺言に従って、Aの死亡後ただちに遺産全部の権利がYに承継された。
平成Aの法定相続人にはYの他にX(原告・控訴人・上告人)もいた。このXは,平成16年4月4日,Yに対して遺留分減殺請求権を行使した。 
同年5月17日、Yが相続を原因とする所有権移転登記を経由したのを受けて,Xは、遺留分減殺を原因とする4億3231万7003分の2億1428万7377の所有権移転登記を求めた。
この額の算定は,遺留分侵害額が,積極財産-消極財産の4分の1である187万1125円に,可分債権としてXが法定相続分を負担した債務(消極財産の2分の1)である2億1241万6252円を加えた額だというものであった。
これに対して,Yは,本件遺言により債務もすべてYが承継しているから相続債務額を加える計算は誤りであり,積極財産-消極財産の4分の1である187万1125円が遺留分侵害額である旨主張した。
第1審(福岡地判平成19年2月2日)及び原審(福岡高判平成19年6月21日)ともに,共同相続人間においてはYが相続債務の全てを承継しているとして,187万1125円の限度でXの請求を認めた。
なお,相続債権者は各相続人に対して相続分に応じて請求できるとして,外部関係と内部関係で扱いを異にしている。

2 判旨
「①相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。②もっとも,上記遺言による相続債務についての相続分の指定は,相続債務の債権者(以下「相続債権者」という。)の関与なくされたものであるから,相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり,各相続人は,相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければならず,指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが,相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し,各相続人に対し,指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。......③相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ,これに応じた場合も,履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず,相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。」

3 解説
「被相続人が相続開始の時に債務を有していた場合の遺留分の額は、民法一〇二九条、一〇三〇条、一〇四四条に従って、被相続人が相続開始の時に有していた財産全体の価額......の中から債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し、それに同法一〇二八条所定の遺留分の割合を乗じ、複数の遺留分権利者がいる場合は更に遺留分権利者それぞれの法定相続分の割合を乗じ......て算定すべきものであり、遺留分の侵害額は、このようにして算定した遺留分の額から、遺留分権利者が......負担すべき相続債務がある場合はその額を加算して算定するものである」(最判平成8年11月26日)
これは,本来,「{積極財産-消極財産(債務)}×遺留分割合」として遺留分算定の中で処理された上で承継されるはずの債務が,その処理をされることなく遺留分権利者に負担されていることから,その負担分を遺留分侵害額に上乗せして帳消しにするものである。本件のXの請求も上記の考えに基づくものであるが,本件判決は,財産全部をYに相続させる旨の遺言がある場合は,債務の全額もまたY一人が全額負担するから,Xの遺留分侵害額に上乗せする必要はないとしたのである。また,このような債務相続分の指定は,相続債権者のあずかり知らぬところで行われているものだから,相続債権者は,相続分の指定にかかわらず,法定相続分について各相続人に請求できるともしている。

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