重要判例解説(12);最高裁判所平成22年12月7日決定

1 事案
株式会社Y(第1審相手方,抗告審相手方,許可抗告審抗告人)は,東京証券取引所マザーズ市場に上場する会社であり,平成21年1月5日以降,「社債,株式などの振替に関する法律」(以下,「社債等振替法」)上の振替株式発行会社になった。
Yは,平成21年6月29日,訴外A社との業務提携のため,普通株式を全部取得条項付種類株式に変更し,これを全部取得するための株主総会決議を行った。この際,全部取得の対象となる株主確定の基準日は8月4日,同月5日と定められた。本件株主総会の基準日は平成21年3月31日であり,総株主通知によれば同基準日におけるY社株主X第1審申立人,抗告審申立人,許可抗告審相手方)の保有株式数は383株であった。
Xは株主総会に先立って,普通株式を全部取得条項付種類株式へ変更すること及びその全部取得に関する決議に反対する旨通知し,総会においても反対の議決権行使をした。
また,本件株主総会の後,7月1日から同月27日までの間に,XはY社株式を買い増し,保有株式を420まで増やした。
平成21年7月10日,Xは会社法172条1項に基づき,Yの全部取得条項付種類株式の取得価格決定申立てをした。なお,この申立ての申立期間最終日は7月21日であった。
個別株主通知が必要だと知ったXは, 平成21年7月21日頃,訴外B証券会社から個別株主通知の申出用紙を受領したが,申出書のBへの送付を遅らせ,マザーズ市場におけるY株式の最終売買日である7月29日に申出書をBへ郵送した。これに対して,Bの担当者は,Y株式は7月30日付で上場廃止になっているので個別株主通知は出来ないと返答した。Xは各所に問い合わせたが,どの証券会社でも同様だった。
なお,Y株式は,最終売買日の売買決済日である8月3日までは振替株式として取り扱われていた。
総株主通知によれば,全部取得条項付種類株式の取得と取得対価交付の基準日(8月4日)におけるXの保有株式は420株であった。8月5日に全部取得条項付種類株式への変更と取得が行われて,Xは420株の対価として相応の金銭を受け取り,株主の地位を失った。
本件申立てでは,YがXの株主としての地位を争ったため,申立てが適法と言えるかが問題となった。
原々決定(東京地決平成21年10月27日)は,会社法172条に基づく価格決定申立てが,社債等振替法にいう少数株主権(同法147条4項)の行使に該当し,個別株主通知から4週間以内に行われなければならないのにXは個別株主通知の手続を経ていないことを理由に,本件申立てを不適法とした。 
原決定(東京高決平成22年2月18日)は,⑴会社法172条の価格決定申立権は,会社法124条1項に規定する権利に該当するか,少なくとも同項規定の権利に関する諸規定を類推適用すべき権利あって,社債等振替法154条1項に規定する少数株主権に該当しない,⑵仮に価格決定申立て県が少数株主検討に該当し,社債等振替法154条2項が適用されるとしても,YはXが価格決定申立ての要件を満たしていることを知りつつ同項の定める形式的用件である個別株主通知を欠くことを理由にXの権利行使を否定しようとするものであるから,信義則に違反し,権利濫用として許されないとして本件申立てを適法とした。

2 判旨
原決定破棄,原々決定に対するX抗告棄却。理由は以下のとおりである。
ⅰ「会社法172条1項所定の価格決定申立権は,その申立期間内である限り,各株主ごとの個別的な権利行使が予定されているものであって,......社債等振替法154条1項,147条4項所定の『少数株主権等』に該当することは明らかである。」
ⅱ「ある総株主通知と次の総株主通知との間に少数株主権等が行使されたからといって,これらの総株主通知をもって個別株主通知に代替させることは,社債等振替法のおよそ予定しないところというべきである。まして,これらの総株主通知をもって個別株主通知に代替させ得ることを理由として,上記価格決定申立権が会社法124条1項に規定する権利又は同項に規定する権利に関する規定を類推適用すべき権利であると解する余地はない。」
ⅲ「少数株主権等それ自体の権利行使期間が,社債,株式等の振替に関する法律施行令40条の定める期間より短いからといって,個別株主通知を不要と解することはできない。」
ⅳ「個別株主通知は,社債等振替法上,少数株主権等の行使の場面において株主名簿に代わるものとして位置付けられており(社債等振替法154条1項),少数株主権等を行使する際に自己が株主であることを会社に対抗するための要件であると解される。そうすると,会社が裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において申立人が株主であることを争った場合,その審理終結までの間に個別株主通知がされることを要し,かつ,これをもって足りる」。本件においてYがXの株主資格を争っているにもかかわらず,審理終結までの間に個別株主通知がなされていない以上,Xは自己が株主であることをYに対抗するための要件を欠いている。
ⅴ「Yが,Xが株主総会の基準日及び取得の基準日の株主であると記載された総株主通知を2回にわたって受けるなどしていたことをもって,Xが,その間Yの株式を保有し続けており,その価格決定申立権の行使を否定すべき実質的な理由がないことをYが知っていたと断ずることは困難である。」したがって,Xの価格決定申立て県の行使につき個別株主通知を要するとのYの主張が,信義則に反し,権利の濫用に当たるということはできない。

3 解説  
振替株式の譲渡は,振替口座簿の記録の書き換えを通じて行われるところ,この書き換えは,年2回の総株主通知又は適宜行われる個別株主通知によって,記録の内容が会社に通知されることで行われる。
本件は,総株主通知と総株主通知の間に取得されたものであるため,個別株主通知によって振替口座簿の書き換えを行わなければ,株式の取得を会社に対抗できないことになる。
本件判決は,会社法172条の価格決定申立てにつき,同権利は社債等振替法の少数株主検討に該当するとした上で,個別株主通知がなければ同権利の行使の際に自らがその会社の株主であることを対抗できないとしたものである。

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