重要判例解説(13);東京高等裁判所平成22年7月7日判決

1 事案
A社は普通株式のみを4万9000株余りしている株式会社であったが,平成20年9月の臨時株主総会で,㋐a種類株式を発行できる旨の定款変更,㋑㋐を前提に従来の普通株式を全部取得条項付種類株式(以下,「b株式」)として新たに普通株式を発行できる旨の定款変更,㋒㋐㋑を前提に,Aがb株式1850株を新たな普通株式1株を対価に取得すること,のいずれについても可決した(以下,「本件決議」)。
同日におけるA株主は,Y(被告訴訟承継人・被控訴人)・B・Aの完全子会社以外には,X1~X4(それぞれ1814~300株の計3214株保有。X1~X3は原告・控訴人),及び,関連輸送会社6社(計4137株保有)がいた。
同年12月24日,株主たる地位を失ったX1~X4が,本件決議は特別利害関係者の議決権行使による著しく不当な決議(会社法831条1項3号)に当たると主張して,Aに対して取消訴訟を提起した。
平成21年1月1日に,AがBに吸収合併されたことから,訴状は同月9日にB営業所(Aの旧本店所在地)に送達され,被告をBとして本件訴訟が開始(当事者間に異議なし)。
同年2月1日,BがさらにYに吸収合併されたことから,YがBの訴訟上の地位を承継した。
なお,吸収合併消滅会社A及びBにおける合併契約承認総会ではX1~X4へ招集通知は出されなかったが,法定期間内に合併無効の訴えは提起されなかった
原審(東京地判平成21年10月23日)は請求却下
X1~X3(以下,「Xら」)が控訴し,①株式総会決議によって株主資格を奪われたものが会社法831条1項の「株主等」に該当するか,②株式買取請求権行使や価格決定申立ての前置を要するか,③b株式取得の対価たる新株発行が発行無効の訴えの出訴期間徒過により有効に確定しても訴えの利益は存続するか,④本件決議後2回の吸収合併の効力がもはや争えなくても訴えの利益は失われないか等が争われた(①は原告適格,②~④は訴えの利益についての争点である)。
2 判旨
控訴棄却(確定)
ⅰ ①につき,「株主総会決議により株主の地位を奪われた株主は、当該決議の取消訴訟の原告適格を有する。当該決議が取り消されない限り、その者は株主としての地位を有しないことになるが、これは決議の効力を否定する取消訴訟を形成訴訟として構成したという法技術の結果にすぎないのであって、決議が取り消されれば株主の地位を回復する可能性を有している以上、会社法831条1項の関係では、株主として扱ってよい」とした。また,総会決意により取締役の地位を奪われた者等の原告適格を新たに明文化した831条1項後段は,「商法旧規定下における取締役解任決議取消訴訟における解任取締役の原告適格を認める多数の下級審裁判例の蓄積とこれを支持する学説及び会社実務を受けて、明文化された......。他方において、商法旧規定の時代には、株主総会決議により株主の地位を強制的に奪われる局面はほとんどなく、下級審裁判例の蓄積も乏しかったため、会社法立案の際には、株主総会決議により株主の地位を強制的に奪われた株主の原告適格の明文化が見送られた......。株主総会決議により株主が強制的に株主の地位を奪われるという現象は、全部取得条項付種類株式の制度が会社法制定時に新設されたことにより、同法施行後に著しく増加したものであることは、公知の事実である。そうすると、......会社法831条1項後段を限定列挙の趣旨の規定と解することには無理がある」とし,総会決議後の組織再編で会社消滅や株主たる地位の喪失が起きた場合,「当該株主の決議取消訴訟に関する利害関係は、組織再編の効力を適法に争っているかどうかを始めとして、種々の事情により千差万別であるから、一律に原告適格を失うものと扱うのは適当でなく、当該株主は原告適格を有するものと扱った上で、個別の事案に即して当該株主にとっての訴えの利益の有無を検討す」べきとした。
ⅱ ②については,明文の規定がないこと,招集手続不備など株式買取請求権行使の機会が保障されない場合があることから,決議取消事由がある場合には決議そのものを取り消すべきであって,決議が有効なことを前提とした手段を株主に強要すべきではないとし,両申立ての前置は不要とした。
ⅲ ③については,新株発行の効力の問題と異なり,会社が強制的に取得したb株式を旧普通株式に戻して株主に変換する作業をするのに取引の安全を考慮する必要性は乏しいとし,A株主たる地位の回復・b株式の創設も無効という効果があるところ,特段の自由のない限り訴えの利益はあるとした。
ⅳ ④につき,本件決議の取り消しによりAの合併承認総会に瑕疵が生ずる(Xらの招集手続の欠缺・Xらの株式買取請求権の行使の機会の不在)ことから,「本件決議に決議取消事由がある場合には,その決議取消訴訟を提起したXらは,AのBへの吸収合併について,合併無効の訴えの原告適格を有する。すなわち,Xらは,Aの株主として,会社法828条2項7号所定の合併の効力発生日に『吸収合併をする会社の株主であった者』に該当する(ただし,決議取消訴訟(本件訴訟)の敗訴判決確定を,原告適格を有することの解除条件とする。)」とした。さらに,「合併無効の訴えを適法に提起していた場合には,Xらには回復可能なAの株主の地位があるから,本件訴訟に訴えの利益があることは明らかである。なお、この結論は、合併契約により消滅会社の株主に交付される合併対価が、現金であるか、又は株式であるかによって左右されるものではない」とし,また,2度以上の組織再編の前身となるAの株主も,全部の組織再編(AB・BY両合併)について無効の訴えを提起すれば,A総会決議取消訴訟・AB合併無効訴訟何れかの敗訴判決確定までは合併無効訴訟の原告適格があると認めた。本件では合併無効の訴えの提起がなかったため,裁判所は,たとえAの合併承認決議に瑕疵があっても,AからBへの吸収合併の有効性は対世的に確定し,AはBに吸収合併されて消滅し,「Xらは,もはや,この吸収合併の効力を争うことが出来ない。そして,有効として扱われる合併契約においては,Xらは,何らの合併対価の交付も受けない」。「本件決議を取り消したとしても,Xらには,A又はBの株主の地位等,対世的に確認すべき権利,地位がない」として,ⅲにいう特段の事由の存在を認め,本件決議取消訴訟は訴えの利益を欠くとした。

3 解説
本件判決は,株主総会決議によって株主の地位を奪われた株主は,その決議を取り消せば株主としての地位を回復する可能性があるから,同決議の取り消し訴訟における原告適格を有するとし,その上で訴えの利益について個別に検討するべきだとした。
そして,その訴えの利益については,本件決議の取り消し判決が確定すればXらはA社株主の地位を回復するから,特段の事情がない限り,訴えの利益があると示した。
しかし,その特段の事情について,本件においては,A社はB社に,B社はY社に吸収合併されており,かつ,その出訴期間は徒過していることから,XらはA社又はB社の株主に戻ることは出来ず,前記特段の事情が認められるとして,結局は,Xらの訴えの利益を否定したのである。

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