重要判例解説(14);最高裁判所平成21年11月27日判決

1 事案
Bは県の観光名所で闘犬興業を行ってきた土産物屋であり,Cはその会長である。
A銀行(補助参加人)は,BまたはCに,経営支援のための県融資(本件県融資)がされるまでのつなぎ融資を要請され,融資を行った。後に追加して融資した分と合わせて貸付額は18億余円に達した。
しかし,その後,Bは民事再生手続開始決定を申立て,融資の相当部分が回収できなくなった。
A株主であるX1・X2(原告・被控訴人・上告人)は,Aの本件各融資は回収の見込みがないにもかかわらず行われたものであり,本件各融資の決裁当時いずれもA取締役であったD(被告・控訴人・被上告人。原審口頭弁論終結後に死亡したため,Y1~Y3が訴訟承継)およびY4~Y9(被告・控訴人・被上告人)に対して,本件各融資実行に関与し,または,取締役の監視義務を怠った点でそれぞれ善管注意義務違反があるとして,Aに対する損害賠償を求める株主代表訴訟を提起した。
A取締役たちの本件各融資への関与としては,本件つなぎ融資(9億5000万円。実質的には無担保融資)については担当専務だったY4及び担当部長だったY7が,本件追加融資1(2億9700万円)及び本件追加融資2(1億6500万円)については担当副頭取だったY4及び担当部長だったY9がそれぞれ実行の決裁を行った。
本件追加融資3(合計3億9350万円)は順次実行されたが,取締役会において,それぞれその実行を承認する旨の決議をした。取締役会に出席した代表取締役Dら取締役は各決議に賛成していた。
1審判決(高知地判平成17年6月10日)は,県が融資を実行する意向を表示していたとしても空が実現する蓋然性は低く,Bの経営は実質的に破たんしており貸付金を回収できる状況ではなかったから善管注意義務違反があったとし,X1らの請求を一部認容した。
原審判決(高松高判平成19年3月16日)は,Bに再建可能性ありとしたY1らの判断には合理性が認められ,AはBの倒産回避のために融資せざるをえず,そのための必要最小限で合理的な融資であるとして請求を棄却した。

2 判旨
一部破棄差戻し,一部棄却。
「元々健全な融資先ではなかった上,前記事実関係によれば,Bの経営を建て直すために9億5000万円にも上る本件つなぎ融資を受けたにもかかわらず,Bは,それから1年も経たない平成9年9月には手形決済資金等のための追加融資を要請するような経営状態にあり,同年末までにBを含むグループ会社全体で約2億円もの資金不足が見込まれたというのである。加えて,本件追加融資1~3(以下「本件各追加融資」と総称する。)に当たっても,本件つなぎ融資と同様,格別の担保が徴求された事情はうかがえないことからすれば,上記手形決済資金等のための追加融資の要請があった時点においては,Bに対する追加融資は,融資金の回収を容易に見込めない状況にあったものということができる。さらに,平成11年3月末日の段階では,Aによる資産査定によって,Bの債務者区分が要注意先から破綻懸念先に変更されるなど,その経営状態はいよいよ劣悪で危機的状況に陥っていたというべきであって,それ以降に行われた本件追加融資3は,融資金の回収の見込みがほとんどなかったものというべきである。......
しかしながら,Aが,Bに対する追加融資を実行しなければ,上記のような経営状態にあったBが破綻,倒産する可能性は高く,そうなれば,Bが本件県融資を受けることができなくなり,本件県融資により回収を予定していたBに対する本件つなぎ融資の融資金9億5000万円までもが回収不能となるおそれがあった。
以上のような状況の下で決裁関与取締役が本件各追加融資の実行を決裁したことに合理性が認められるのは,本件つなぎ融資の融資金の回収原資をもたらす本件県融資が実行される相当程度の確実性があり,これが実行されるまでBの破綻,倒産を回避して,これを存続させるために追加融資を実行した方が,追加融資分それ自体が回収不能となる危険性を考慮しても,全体の回収不能額を小さくすることができると判断すること(以下,この判断を「本件回収見込判断」という。)に合理性が認められる場合に限られるものというべきである。」
「本件追加融資1については,決裁関与取締役の本件回収見込判断に合理性があったものということができる。」
次に,本件追加融資2および3について。Aは,県の最高責任者である知事が本件県融資の実行にストップをかけたとの連絡を受け,本件県融資が実行される可能性に疑念を抱くべき事情が生じていたものの,県の担当者は知事の意向について上記連絡をした際,出納長が中心となって対策を講じるのでいましばらく時間が欲しい旨述べていたことから,県の担当者らにおいて知事の意向を踏まえC会長一族の排除に積極的に取り組み,その実現が図られることを期待することは,各別不合理なことではなく,他方,「Aは,知事の意向について上記連絡があった後,県に対し,平成10年7月31日,同年12月21日と2度にわたり期限を定めた要請書を発出して,本件県融資の実行を要請したにもかかわらず,C会長一族の排除に向けた格別の進展もなく,県は,2度目の期限である平成11年3月31日をも徒過し,その時点で,知事の意向が示された後10か月以上が経過していたというのであって,既に,県の担当者らの取組みによって,Bの経営からのC会長一族の排除が実現されることを期待できる状況にはないことがほぼ明らかになっていたといえる上,それまでには,A自身が,その資産査定において,Bの債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更することを決定しているのである。そのような状況の下で,ほとんど回収見込みのない追加融資を実行することは,単に回収不能額を増大させるだけで,全体の回収不能額を小さくすることにつながるものとはいえない」。
「そうであれば,上記の時点以前に実行された本件追加融資2については,決裁関与取締役の本件回収見込判断の合理性を直ちに否定することはできないものの,それ以降に実行された本件追加融資3については,決裁関与取締役の本件回収見込判断は,著しく不合理であったものといわざるを得ない」。

3 解説
本件判決は,回収の見込みなどに鑑みて,融資をすることで回収不能額を縮小することが出来ると判断することに合理性があるのであれば,善管注意義務違反にはならないとした上で,本件追加融資3については,この融資をすることによって回収不能額を縮小できるとの判断については合理性を否定したものである。

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