重要判例解説(17);東京高等裁判所平成22年7月7日決定

1 事案
Y(東京放送ホールディングス。相手方)は,テレビ放送事業等を営む株式会社であり,平成21年4月1日,吸収分割によりその放送事業等を完全子会社に承継し,放送法による認定放送持株会社になった。
本件は,この吸収分割に反対するY株主が,株式買取請求に係る買取価格について,Yと争っている事案である。その経緯は次のようになる。
  平成17年8月頃から,X株式会社(楽天。抗告人)はYとの業務提携等を実現すべく,自らの子会社等にY株式を取得させた。
  XはYに業務提携を提案したが,協議が整わず,Yは買収防衛策の導入等の対抗策を取った。
平成19年2月28日,XからYに対して協議の終了が通知・公表された。
その後,Xの子会社等はY株式の追加取得を続け,Xは保有割合が20%をこえるまでY株式を追加取得する旨を,Yに通達した。
平成19年11月27日,Xの子会社等が保有するY株式(保有割合約19,86%)が,Xに譲渡された
平成19年12月21日,放送法改正によって認定放送持株会社制度が導入された。同制度は,複数の放送事業者を子会社とする持株会社の設立を可能とするものであるが,
認定放送持株会社には議決権の保有制限(33%)がかけられている。
  これにより,上記の吸収分割によって認定放送持株会社となったYもこの保有制限を受けることになり,Xが株式取得によって支配権を獲得することは事実上不可能となった。
平成20年12月16日,Xらは,臨時株主総会において,上記吸収分割承認決議案に反対するなどした上で,平成21年3月31日付書面にて株式買取請求を行った。
そして,株式の買取価格について協議が整わなかったことから,X・Y双方が株式買取価格決定の申立てを行った。
原審(東京地決平成22年3月5日)は,吸収分割の効力発生日を基準日として,効力発生日前1か月の株価終値による出来高加重平均値をもって算定した価格が「公正な価格」だとしつつも,Y自らがXらとの間での本件株式価格決定について一貫して上記金額よりも若干高い価格を主張しているとして,Y主張の1株1294円を買取価格とした。

2 決定要旨
抗告棄却。
ⅰ 買取価格の判断基準
「織再編行為についての......株式の買取価格の決定の申立てにおいて......組織再編行為により、企業価値、株主価値が増加する場合には、相乗効果というべきシナジーを反映した価格を基礎として「公正な価格」を算定すべきであり、逆に企業価値、株主価値が減少する場合には、当該組織再編行為の決議がなかったとしたら有していたであろう価格、......を基礎として「公正な価格」を算定すべきこととなる。」
「吸収分割株式会社の事業を完全子会社である吸収分割承継会社に承継させ自らをその持株会社とする吸収分割では、通常、吸収分割自体によって、吸収分割株式会社の企業価値や同社の株主価値が毀損されることはなく、吸収分割により承継される事業にシナジーはそもそも生じない。......企業価値を増加させることがあるとしても、その増加分は、従前の吸収分割株式会社の株主が持株比率に応じて当然に享受するのであって、組織再編の条件次第で企業価値の増加分が各当事会社の株主の間で不公正に分配されるということは起こらない。......『公正な価格』とは......単に、本件吸収分割の契約を承認する株主総会の決議により、当該決議がなかったとしたら有していたであろう価格(「ナカリセバ価格」)を基礎として算定することとなる。」
「公正な価格を定める基準日については、契約の成立時点における目的物の価値を基準に決めるのが自然であり、かつ、合理的であるから、基本的に買取請求権行使時に接着した時期と解するのが相当である。......〔多数の反対株主が買取請求権を区々に行使した場合にも同一時点の価格を基準とすべきであり,その場合,投機的行為の余地が制限される〕買取請求期間満了時〔平成21年3月3日〕を公正な価格を評価する基準日とするのが相当である。」
ⅱ 本件における具体的検討
「〔Yの臨時株主総会において〕認定放送持株会社化を前提とする本件吸収分割契約承認の件は、出席株主の議決権数の76.31%以上、総議決権数の71.86%以上の賛成により、可決された......。
......改正放送法が成立した日の前日......以降、Yが本件吸収分割と認定放送持株会社化について公表した平成20年9月11日、さらには承認決議がされた株主総会開催日......までの間のYの株価の推移は、......TOPIXの推移の範囲内の変動を示していて、この間、本件吸収分割と認定放送持株会社化の情報は,Yの株価に特別の影響(TOPIXの推移の範囲を超えるような影響)を生じさせていない......。」「そうすると、Yの認定放送持株会社化を前提とした本件吸収分割が、一般的に、Yの企業価値または株主価値に影響を与え、これらを毀損するものと認めることは相当とはいえない。」
「〔放送法改正法案閣議決定日の前日(平成19年4月5日)から改正放送法成立の日に至るまでの間のY株式の下落率は41,4パーセントであって,同期間のTOPIXの下落率(14,6%)と比較して著しく高い数値であるとのXらの主張につき〕平成19年4月5日ころは,XとYとの間で行われていた業務提携等の協議が同年2月28日に打ち切りとなり......,それ以降、同年3月末日ころから同年5月末日にかけて、XとYの対決色が強まり、両社の攻防戦が再燃し、XがY株式を市場で追加取得すると公表したとの報道がされ......、思惑先行の売買となり、一時ストップ高になるなど......の時期と重なることに着目すベきである。これに着目すると、......〔当該期間の〕Y株式の下落率がTOPIXの下落率より高い数値となったのは、これらのXの行動に起因する要因が株価に大きく影響した蓋然性が高いとみられるのである。......Yによる認定放送持株会社化の公表日や株主総会の決議日の前後において、Y株式の市場価格が目立った下落を示していない事実......を併せ考えると、Xらの指摘する時期におけるY株式の下落率の数値をもって、認定放送持株会社化がYの企業価値または株主価値を毀損したことの根拠とすることは困難というべきである。」
その他,認定放送持株会社化に伴う議決権保有制限によるYの記号価値・株主価値の毀損というXらの主張につき,Y独自に買収防衛策として出資制限を課しているわけではないこと,株主は他の株主の賛同を得て経営陣の交代を図ることが可能であることなどから,企業価値又は株主価値の毀損を認めなかった。
ⅲ 本件株式の買取価格の算定
「認定放送持株会社化と連動した本件吸収分割は、Yの企業価値または株主価値を毀損したものとは認められないから、『決議がなかったとしたら、本件株式が買取請求期間満了時に有していたであろう公正な価格』は、基準時における実際の市場価格を上回るものではあり得ない。......
したがって、本件における『公正な価格』を算定するについては、基準時におけるY株式の市場株価を算定の基礎にすべきである。......同日の東京証券取引所におけるY株式の終値......である1株1294円をもって、本件株式の買取価格としての『公正な価格』と認めるのが相当である。」 

3 解説
買取価格の決定に際しては,企業再編によるシナジーが考慮されるのが一般的であるが,本件では,完全親子会社間での吸収分割においてはシナジーが生じないとして,「ナカリセバ価格(=その決議・組織再編が無ければ有していたであろう価格)」の算定に焦点を絞っている。そして,この価格については,買取請求期間満了時を基準時として算定すべきであるとしたのである。

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