重要判例解説(18);最高裁判所平成20年4月14日判決

1 事案
Xら(原告・控訴人=被控訴人・上告人)4名は,山口県熊毛郡上関町長島の四代(しだい)地区の世帯主であり,Y2ら(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)113名は,Xら以外の同地区の全世帯主である(以下,上関を「K」,四代を「S」とする)。
同地区では,電力会社Y1(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)が原発建設を計画している。
原発建設用地の一部である本件土地1~4は,土地台帳にS組の所有とする記載があり,不動産登記簿表題部所有者欄にもS組と記載された。
また,明治24年10月当時,K村は,区会制度を設けて区会条例を制定したが,財務大臣の許可が得られず,旧財産区にはならなかった。
S区区長Y2は,平成10年11月30日付で作成した。なお,それまでS区には同様の規約は存在していなかった。
同年12月12日,S区役員会の全員一致での決議に基づいて,本件各土地を何の権利負担もないものとして,Y1所有の土地と交換する契約(以下,「本件交換契約」)をY1と締結した。
Y2は,本来なら本件交換契約締結当日にS区の臨時総会開催することを考えていたが,原発反対派の反発が懸念されたことから断念した。
同月14日,不動産登記簿表題部のS組の記載を所有者錯誤を原因として抹消され,Y2の住所氏名が記載された。同日,Y2の所有権保存登記を経て,Y2からY1へ本件交換契約を原因とする所有権移転登記手続が行われた。
原発建設に反対するXらは,Yらを被告として,3件の訴訟を提起した。
主位的請求は,Xらが本件各土地に共有の性質を有する入会権(以下,「共有入会権」)を有することの確認。予備的請求は順に,総有権,入相部落の構成員たる地位に基づく使用収益権(以下,「入相使用収益権」),総有団体の構成員たる地位に基づく使用収益権の各確認であった。
Y1に対しては,更に,共有入会権の対象である本件各土地の処分には入会権者全員の同意が必要であるところ,Xらの同意のない本件交換契約は無効であるとして,本件各土地の所有権移転登記の抹消,本件土地1~3について立ち入り・立木伐採・現状変更の各禁止も請求した。
第1審(山口地岩国支判平成15年3月28日)は,入相使用収益権の確認請求と,Y1に対する立木伐採・現状変更禁止請求を認容した。
しかし,入会権自体の確認請求については固有必要的共同訴訟だとして却下し,Y1に対する登記抹消請求と立ち入り禁止請求については,入会使用収益権の侵害に当たらないとして棄却した。
また,Y2らのうち,Xらの請求を争わない5名については確認の利益を否定して却下した。
原審(広島高判平成17年10月20日)では,Xらは全面的に敗訴した。
判決は,「S区は法律上の財産区とはならなかったが,明治24年10月頃に,S部落の住民団体として権利能力のない社団であるS区が成立し」,その際に「本件各土地を含むS部落の土地を所有し,管理処分する権能はS区に帰属した」から,S区成立前の共有入会権は地役入会権に変化したとする。
そして,地役入会権は,「地役権の法理に従うから,消滅時効の法理に服する」として,「遅くとも昭和50年ころには使用収益する者がいなくなった」との認定の下,地役入会権の時効消滅を認め,「S区所有の財産を処分するには役員会の決議によることが慣行であった」と認定して,本件交換契約を有効とした。

2 判旨
上告棄却。
ⅰ「S区は権利能力なき社団であり,本件各土地がS部落の世帯主の総有に属するものであることは,S区の成立の前後を通じて変わりがないことが明らかであるから,本件各土地を管理処分する権能がS区に帰属することになったとしても,S部落の世帯主が有していた本件入会権が共有の性質を有しないもの......になったということはできない。......原審の......消滅時効の判断は,前提を欠く」。
ⅱ「S部落においては,Y2がS区規約を作成した平成10年ころには,既に本件各土地の処分,すなわち,本件入会権の処分については,他の旧S組財産と同じくS区の役員会の全員一致の決議にゆだねる旨の慣習(以下「本件慣習」という。)が成立していたものと解するのが相当である。」
ⅲ「本件慣習の効力について検討すると,民法263条は,共有の性質を有する入会権について,各地方の慣習に従う旨を定めており,慣習は民法の共有に関する規定に優先して適用されるところ,慣習の効力は,入会権の処分についても及び,慣習が入会権の処分につき入会集団の構成員全員の同意を要件としないものであっても,公序良俗に反するなどその効力を否定すべき特段の事情が認められない限り,その効力を有するものと解すべきである。そして,本件慣習については,本件土地1~3の利用状況等にかんがみても,公序良俗に反するなどその効力を否定すべき特段の事情が存在することはうかがわれないので,その効力を有するものというべきである。」  
(反対意見) 2名(横尾和子裁判官・泉徳治裁判官)の反対意見は,①「明治24年10月に四代区が権利能力なき社団として成立したという事実は,当事者も主張していない事実である」こと,②「村会が区会条例を議決したことからS区が権利能力なき社団として成立したと認定するのは,著しく合理性に欠ける」こと,③S組名義の土地売却事例に関する原審の認定事実は本件「慣行の存在を証明する間接事実として重要視することはできない」こと,④「S区規約は,S部落の世帯主全員の決議や確認の下に作成されたものではなく,臨時総会の開催を断念したY2が,......登記のため司法書士の指導の下に急きょ作成したものにすぎないのであって,S区規約の上記記載から,S区の財産の処分についてはS区の役員会の全員一致の決議による旨の慣行があると認定するのは相当でない」こと,⑤Y2がS区の通常総会を開催しようとしたという「認定事実は,S部落の最高意思決定機関は常会(総会)ではないかとの疑いを抱かせるものである」こと,⑥「総有に属する土地について,構成員の総有権そのものを失わせてしまうような処分行為は,本来,構成員全員の特別な合意がなければなら」ず(最判昭和50年55年2月8日民集129号173頁を引用),「同処分行為を役員会の決議にゆだねるというのは例外的事柄に属するから,その旨の慣行が存在するというためには,これを相当として首肯するに足りる合理的根拠を必要とする」ことなどを指摘し,原判決による本件慣行の認定は「経験則に違反する不合理なもの」であり,「S部落において,本件慣習が成立していたとすることはできない」とする。

3 解説
本件判決は,共有地の処分については本来共有者全員の同意が必要とされているところ,本件のような共有入会権では慣習が優先され(民法263条),全員一致によらずに処分できる旨の慣習も原則として有効であるとしたものである。また,入会使用収益権については,地役権と同様に消滅時効にかかるとしている。
なお,本件判決には反対意見が存在するが,そこで争われているのは,本件慣習が認定できるか否かであり,本件慣習のような慣習によって全員一致の原則が覆されるという点については争われていない。

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